趣味

『天空の子孫の復活』第一話

私は仕事を選べるほど偉い作家ではありませんが(時には選ぶことはできても、多くは来たもの拒まずです)、「好きなジャンル」はあります。
ちなみに、「好き」と「得意」は違うことは前提です。

ファンタジーが大好きだあぁぁ!!
しかも、王道で!
剣と魔法!
ドラゴンに冒険者!

…でも、ジャンル的には衰退していまして(SFとこんがらがったり、萌えを追求したりする訳の分からない物が多すぎます)、それじゃあ、
「ないなら書こう!」と思い立ちました。

週に一度更新ペースで、一年ぐらい順調に書いたら終わるかなぁ、みたいな。
(基本的に毎週一説ペースで)
全く予定は未定ですが、設定だけは決まったので書き始めてみました。

私が作家だというささやかなアピールでもありますが。

興味を持たれた方は、本編の最後まで(いつだろう?)、応援のほどよろしくお願いいたします。
忌憚のないご意見は大歓迎です。
ではでは、ファンタジー小説『天空の子孫の復活』始まります…。

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「三三三年に一度の空の奇蹟に二つの"法"を捧げよ。
 一つは我が活動するに相応しい"体"を。
 いま一つは我が活動するに必要な"時間"を。
 この二つをもって、我は天空の子孫と成るべし」
                  『邪典グルノープル復活の書』序章・宣言より


   Ⅰ

 風が唸りをあげ、縦横無尽に吹き荒れる。
 鳥たちは危険を感じて逃げ惑う。
 今この場で「奴」を目の前にして逃げないのは、果敢にも「仕事」にやってきた四人の若者たちだった。
 もともと仕事と呼ぶのだから、逃げるはずもないのではあるが。
 依頼は、目の前の「奴」こと、巨大怪物ゴーレムを倒すこと。
 背丈は人間が及ぶところではなく、二階建ての家が石の人形になって、暴れまわっている、という凶暴さだった。
 破壊の残骸は、すでに村二つの壊滅にいたっている。
 破壊するものもない丘の上にうまくおびきだして――さあ、四人の総攻撃が始まる、という舞台が整ったところであった。
 一番小柄な少女が、自然の艶がある形の良い唇から何事か呟きだす。
 一人ならばこの石の巨体にひねり潰されておしまい、と見られてもおかしくなかったが、ゴーレムがどんなに暴れてみせても少女には近づくことさえできなかった。
 先ほどからの荒れ狂う風は少女が精霊に働きかけた呪文だったのだ。
 ゴーレムの視界を遮り、動きを鈍らせ、風の檻に閉じ込めていた。
 だが、それだけでは倒すことにはならない。
「アイル、よくやった。後は力仕事だ。任せときな」
「あたしは力仕事なんかしないわよ!」
 物腰の柔らかそうな青年の声と、青年の発案に即非難する、凛とした気の強い別の少女の声。
「あ、あの……私、もういいのかな」
 アイルと呼ばれた少女は、詠唱を終えておずおずと尋ねた。
「ああ、離れてろ。ちょっとおっぱじめるからな」
 戦闘の場に似つかわしくなくウィンクで答えた青年に、アイルは真っ赤な顔で後ずさる。
 その時――ふわりと浮いたアイルの外套の陰から、人外の長い耳がちらりとのぞいた。
「よくやったな」
 後退のすれ違いざま、もう一人の――少女の二倍はありそうな巨漢の――青年が、アイルの頭をぽんぽんと叩いて労をねぎらった。
「ファルクっ! アイルに気安く手ぇ出してんじゃないわよ!」
 またしても気の強い少女の声が飛ぶ。
 亜麻色の短い髪が真っ赤になって逆立ちそうな勢いだった。
「おっかねえな。気安くないぞ。ちゃんと心をこめてるからな」
「余計悪い! 心なんかこめるなっ! 男の分際でっ!」
「クリス、それは差別発言というもんでな……なあ、シェル、フォローしてくれよ」
 物腰の柔らかい青年シェルは、両手を軽くあげて相棒に「さて、ね」と笑ってみせた。
「だーっ!」
 髪とおそろいの亜麻色の瞳をした少女、クリスは、ファルクのため息をものともしなかった。聞く耳持たず、という調子で、目の前のゴーレムに向き直る。
「こんな雑魚相手に時間をかけるなんて、惜しくて涙が出そうだわ。こっちは早くアイルと午後のお茶を楽しみたいんだから、作戦通りちゃんとやってよね」
 アイルのことになるとこと甘すぎる提案である。
 二人の男は同時に苦笑しながらも、クリスと同じくゴーレムに対峙した。
「それでは、ご要望にお答えして、っと」
 上着のスモックの裾を軽く翻して、シェルがゴーレムの正面に素早く移動すると、動きざまに短剣を四本連射した。
 それらは、寸分の狂いもなくゴーレムの両肘・両膝の全四関節にあたるくぼみに食い込み、石の巨体はギギギ、と鈍い音を立てて動きが止まった。
 クリスは、シェルの手際の完璧さに一瞬唾を飲み込み、だが、次には自分の役割を果たすべく、右手を真っ直ぐと前にさし出した。
「"ロース・デルヴァ・リングス"……空の狭間から、轟け。雷鳴の唸りよ!」
 曇り空の一片、ゴーレムの頭上だけが黒く化し、クリスの叫びと同時に、雷が空気を激しく震わせる怒号とともに飛来した。その金色の線は、シェルの放った四つの短剣に分散してゴーレムの体に電撃を走らせた。
 フゴオオゥゥゥ! ギャググググゥゥゥ……
 空気を激しく震わせるゴーレムの悲鳴。
 巨体は首だけをもたげて挑戦者たちを威嚇しているようだったが、もはや力はない様子だった。
「さて、最後なんだが……」
 ファルクは、自分の身の丈の倍近くあるような大剣を片手で簡単に扱うと、先ほどのため息はもう忘れたとばかりに、クリスを見ると笑って言った。
「なあ、クリス。決め技は何がいいと思う?」
 はあ? という顔をしたのはクリスである。そして、ファルクの態度をふざけているととったのか、こちらはまたしても怒りの回答だった。
「そんなの何だっていいわよ! カッコつけてないで、さっさと片付けてよね!」
「ふん、つれないな。分かった。ここは、ひとつ、剛毅かつ洗練された俺の肉体美を活かした必殺技で……」
 ガズンッ!
 大地が、ゴーレムの一撃で揺れた。
 ファルクに向けて落とされた鉄槌は、しかし、髪一本触れられずに空をきっていたのである。
 見切っていたのか、ファルクは微動だにせず、ゴーレムを不敵に仰ぐだけだった。
「おっと、往生際が悪いぜ」
 ファルクは剣を構えた。
「決めた! てめぇは、砂にまで粉砕してやるよっ!」
 剣の周囲に風が小さな渦巻きを生み出した。
「壊王剣八六の必殺技、その三九!  "破騨"!」
 大剣が振り下ろされた途端に渦巻きは竜巻となって、ゴーレムまでのわずかな距離の大地をも一線に削り、そして、衝撃はゴーレムを一撃で粉砕した。
 さらさらと砂が散ってしまうと、戦いの轟音は静まり、丘の上には、四人の姿だけが残った。
「どうだ、この連携プレイを締めくくる俺様の壮絶な技はよ? ん、クリス」
 が。振り向いた先にクリスはいなかった。
「アイル、無事だった? 怪我はない?」
「うん、大丈夫。クリス、すごかったよ! おめでとう」
「ありがとう。でも、アイルだってすごかったわよ。あなたの最初の封じ込みがうまくいかなかったら、こんなに簡単にはいかなかったもの」
 少々離れた所から、刈り上げた髪を掻きながらファルクが問いかける。
「あのよー、女同士で盛り上がってるところ悪いんだけど、俺らの功績も褒めてくんない? てか、俺の話、聞いてない?」
 割り込んだファルクに、クリスはきつい視線を送った。
「一瞬でも相手に攻撃を受けるなんて、おかしな余裕見せるからよ」
「ちゃんと避けただろ」
「あたしの苦労を無駄にするようなこと、やめてよね!」
 クリスは言い切ってしまうと、アイルの肩を抱いてその場を離れていく。
「ちょっと、いや、かなり手厳しいな」
 すれ違いざま、シェルは柔和な笑顔で声をかけてきた。
「一度でも手を組んでの戦いだ。終わりに挨拶ぐらいはあってもいいだろう?」
「そうね。無事仕事が済んで良かったわ。本当ならあたし一人でも倒せる相手に、あんた達っていうおまけまでつけてくれたギルドに何て言ってやろうか考えていたところよ」
「冒険者は腕の信用が第一だからな。二人はこの街が初めてなんだから仕方がない」
「そう。お目付け役だった、ってこと」
「そんな顔するな。エマにまでつかみかかりそうな勢いじゃ困る。そんなに嫌なら、報告は俺がしておくよ。報酬は……ほら」
 シェルが腰のポーチから布袋を取り出した。
「腕は疑っていなかったよ」
「……そう。本当はあんた達だけでも倒せる相手だった、ってこと。仕事をとって悪かったわね」
「まあ、どうとってもらっても構わないが、れっきとした報酬はあるんだ。どうする?」
 クリスは、ふふん、と笑ってから布袋を受け取った。
「こちらも仕事はしたから、報酬はいただくわ。でも、あんた達とはここまでよ。仕事、ご苦労様。そして、さよなら」
「あ、あの……さようなら」
 会話には一切加わらずに見守っていたアイルは、立ち去りぎわに、ぴょこんと頭をさげた。そして、クリスに付き添っていく。
――女性陣を見送る二人の男たちは、並んで囁きあった。
「いいよなぁ」
「ああ、そうだな」
「俺は、気の強い方な。ああいう女が弱いところをみせた時がたまらないぜ」
「お前の趣味は相変わらず変わってるな」
「じゃあ、お前の趣味はなんだ。エルフが珍しいのか?」
「無邪気なところを、女にしてみたいね」
「うわっ、さらりと言うことかよ!」
「――で?」
「そりゃあ、もちろん。ここで終わらせるにはもったいない」
「じゃあ、行くか」
「なあ、シェル。俺、クリスになら殴られても喜べそう」
「だからお前の趣味は変わってる、って言うんだよ」
 二人は笑みを交わし合って、クリスとアイルの去っていった方向に足を向けたのだった。

<続く>
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はい、では、また~。

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